バブル時代の死語|「アッシー」「メッシー」の意味とは?

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バブル時代とはどんな時代だったのか?

日本経済が空前の好景気に沸いた「バブル時代」。1986年から1991年頃までの約5年間は、日本中が狂乱的な熱気に包まれていました。この時代には独特の言葉や文化が生まれ、今でも「バブル」という言葉を聞くと、あの頃の狂騒を思い出す人も多いでしょう。今回は、そんなバブル時代の象徴的な死語である「アッシー」「メッシー」について掘り下げていきます。まずは、バブル時代とはどのような時代だったのかを振り返ってみましょう。

バブル経済の始まりと終わり

バブル経済は、1985年のプラザ合意による円高対策として実施された金融緩和政策がきっかけで始まりました。日銀が公定歩合(現在の政策金利)を引き下げたことで、市中に大量のお金が流れ込み、株価と地価が急騰しました。

バブル経済の主な特徴:

  • 地価の高騰: 「東京の土地を全部売れば、アメリカ全土が買える」とまで言われました
  • 株価の急上昇: 日経平均株価は1989年12月に史上最高値の38,915円を記録
  • 不動産投資の過熱: 企業が競って土地を購入し、価格をさらに押し上げる悪循環
  • 豪華な接待文化: 企業の交際費は年間約6兆円(現在の約2倍)に達していました

この狂乱状態は1989年末から1990年にかけて、日銀の金融引き締め政策によって幕を閉じます。1991年から地価と株価は下落に転じ、いわゆる「バブル崩壊」が始まりました。そして日本経済は「失われた10年」と呼ばれる長期不況へと突入していくのです。

バブル時代の消費文化と若者の生活

バブル期の若者たちは「消費は美徳」とばかりに、贅沢な生活を謳歌していました。特に注目すべきは、若い女性たちの消費行動です。彼女たちは「バブル七つ道具」と呼ばれる高級ブランド品を身につけることがステータスでした。

バブル七つ道具当時の相場
ルイ・ヴィトンのバッグ15~20万円
シャネルのスーツ80~100万円
カルティエの時計30~50万円
ティファニーのアクセサリー10~30万円
ブルガリの財布10~15万円
セリーヌのスカーフ5~10万円
プラダの靴8~15万円

当時、OLの平均年収が300~400万円程度であったことを考えると、これらのアイテムがいかに高額だったかがわかります。それでも、「ブランド品を持っていないと恥ずかしい」という風潮があり、多くの若者がローンを組んででも購入していました。

「ジュリアナ東京」に代表される派手なナイトライフ

バブル期を象徴するナイトクラブといえば「ジュリアナ東京」です。1991年に六本木にオープンし、わずか3年ほどで閉店したにもかかわらず、今でもその名を知らない人はいないほどの伝説的な存在となっています。

ジュリアナで踊る女性たちは「ジュリアナ系」と呼ばれ、以下のような特徴がありました:

  • ボディコンと呼ばれる体にぴったりとしたドレス
  • 派手なメイクと大きなヘアスタイル
  • テーブルの上でダンスする「テーブルダンス」
  • 「子供だってできるもん!」などの決め台詞

「24時間戦えますか」の企業戦士文化

バブル期の企業文化も特徴的でした。リクルートの「24時間戦えますか」というコピーに代表されるように、仕事に生きる「企業戦士」という生き方が美化されていました。残業は当たり前、休日出勤も珍しくない時代でした。

多くの会社員は、過酷な勤務の後に豪華な接待や飲み会に参加し、深夜までお酒を飲み、数時間仮眠して再び出社するというライフスタイルを送っていました。そんな中で生まれたのが、「アッシー」「メッシー」といった言葉だったのです。

「アッシー」「メッシー」とは何か?その意味と使われ方

バブル時代を象徴する死語として、「アッシー」「メッシー」という言葉があります。これらの言葉は当時の恋愛観や男女関係を端的に表現しており、現代ではすっかり使われなくなったものの、バブル期の記憶とともに語り継がれています。これらの言葉が持つ意味と当時の使われ方について詳しく見ていきましょう。

「アッシー」の語源と実態

「アッシー」とは、「足し(アシ)」が語源となっています。これは「足」を提供する、つまり移動手段としての車を持つ男性を指す言葉です。

当時はまだマイカーを持つことがステータスとされていた時代。特に若い女性にとって、車を持つ男性との交際は、週末のドライブデートや遠出の旅行などが可能になるという大きなメリットがありました。

「アッシー」の条件:

  • 自家用車(できれば高級車)を所有していること
  • ガソリン代や高速代などを気にせず出せること
  • 女性の行きたい場所にいつでも連れて行ってくれること
  • 待ち合わせ場所まで迎えに来てくれること

車を持つ男性が女性をドライブに連れていく「足」としての役割

「アッシー」の最大の特徴は、女性の「足」としての役割に徹することでした。女性が「銀座に行きたい」と言えば銀座へ、「湘南のビーチに行きたい」と言えば湘南へ。女性のわがままな要求に応えることが求められていました。

当時の典型的な「アッシー」利用シーンはこんな感じです:

金曜日の夜、彼女からの電話:「明日、原宿でお買い物したいんだけど…」

彼:「いいよ。何時に迎えに行けばいい?」

彼女:「10時に家の前で待ってて。あと、帰りに横浜までドライブしない?」

彼:「了解。楽しみにしてるよ」

このようなやり取りの中で、「アッシー」は主に移動手段を提供する役割を担っていました。中には、女性の友達も一緒に乗せて買い物に連れて行き、自分は車内で待機するという、まさに「運転手」のような扱いを受けるケースもありました。

バブル期の流行語大賞にもノミネートされたこの言葉は、当時の男女関係の一面を如実に表していたのです。

「メッシー」の意味と背景

「メッシー」は「メシ(食事)」が語源となっており、食事をおごってくれる男性を指す言葉です。「アッシー」と並んで使われることが多く、同じ男性が両方の役割を兼ねることも少なくありませんでした。

「メッシー」の特徴:

  • 高級レストランの予約を取れること
  • 女性の好きな料理や店を知っていること
  • 支払いを気前よく全額負担できること
  • 「割り勘」という言葉を絶対に口にしないこと

食事(メシ)をおごってくれる男性という意味

バブル期は企業の接待費が潤沢だった時代。多くの男性サラリーマンは会社の経費で豪華な食事に慣れていました。そのため、デートでも自腹を切って高級店に女性を連れて行くことが当然視されていたのです。

「メッシー」の使われ方は以下のようなものでした:

女性同士の会話:「最近どう?新しい彼氏できた?」

友人:「うん、銀行マンの○○君と付き合ってるの。めっちゃいいメッシーよ!」

女性:「いいなぁ!どんなところに連れて行ってくれるの?」

友人:「先週は六本木のフレンチ、昨日は銀座のステーキハウス!」

このように、男性の価値は「どれだけ良い店に連れて行ってくれるか」という基準で測られることもあり、「メッシー」の質が女性同士のステータス競争の対象となることもありました。

その他のバブル期の恋愛用語・死語

「アッシー」「メッシー」以外にも、バブル期には特徴的な恋愛用語がたくさんありました。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

  • 「パシリ」:買い物袋を持ってくれるなど、女性の手伝いをする男性
  • 「タクシー」:「アッシー」よりさらに使い捨て感が強く、移動だけに利用される男性
  • 「ベルギー」:ベルが鳴る(電話をかけてくる)だけで実際には会わない、いわゆる「電話彼氏」
  • 「ATM」:お金だけを提供する男性(現代でも稀に使われる)
  • 「三高」:高学歴・高収入・高身長の男性を指す言葉
  • 「ダンナ様」:特に愛人関係で、経済的支援をしてくれる年上の男性

これらの言葉には、男性をその機能や役割で評価する風潮が色濃く表れています。バブル期の「恋愛」は、現代の価値観から見ると非常に功利的で割り切ったものであったことがわかります。

現代に残るバブル文化と死語の現在

バブル期の象徴的な言葉「アッシー」「メッシー」は、現代ではほとんど使われなくなりました。しかし、バブル文化自体は形を変えながら現代にも影響を与えています。ここでは、なぜこれらの言葉が死語になったのか、そして現代の恋愛観との比較を通じて、バブル文化の現在を探ってみましょう。

なぜこれらの言葉が死語になったのか

「アッシー」「メッシー」といった言葉が死語になった背景には、以下のような社会的・経済的要因があります。

経済的要因

  • バブル崩壊による経済状況の変化:1990年代初頭のバブル崩壊以降、企業の業績悪化や給与水準の低下により、男性が贅沢なデートを頻繁に行える経済的余裕が減少しました。
  • 若者の所得低下:特に非正規雇用の増加に伴い、若年層の所得は全体的に減少。マイカー所有率も低下し、「アッシー」の存在価値自体が薄れました。
  • 女性の経済力向上:女性の社会進出が進み、自分でお金を稼ぐ女性が増加したことで、男性に経済的に依存する必要性が低下しました。

価値観の変化

  • 男女平等意識の高まり:デートでの支払いや移動手段を男性が一方的に負担するという考え方が古いものとなり、「割り勘」文化が一般化しました。
  • 機能による人の評価への反発:人を「アッシー」「メッシー」という機能だけで捉える価値観に対する批判が高まりました。
  • SNSの普及:出会いや交流の場がオンラインに移行し、直接会う前の段階でのコミュニケーションが重視されるようになりました。

バブル崩壊から30年以上が経過した現在、「アッシー」「メッシー」という言葉は、当時を知る世代にとっては懐かしい思い出の一部となり、若い世代にとっては歴史の一部でしかありません。

現代の恋愛観との比較

現代の恋愛観は、バブル期と比較してどう変化したのでしょうか。

バブル期の恋愛の特徴

  • 男性が経済的負担を担うことが当然視される
  • 外見や所有物(車、ブランド品など)が重視される
  • 明確な役割分担(男性は稼ぐ、女性は美しく)
  • 社会的成功者(企業戦士)としての男性の魅力

現代の恋愛の特徴

  • 経済的負担は互いに分担する傾向(割り勘文化)
  • 内面的な価値観の一致や共通の趣味が重視される
  • 柔軟な役割分担(共働き、家事分担など)
  • ワークライフバランスを重視する男性の増加

このような違いは、単なる時代の変化というだけでなく、バブル崩壊後の「失われた30年」における日本社会全体の価値観の転換を反映しています。

SNS時代の新しい恋愛用語

「アッシー」「メッシー」に代わって、現代では新しい恋愛用語が生まれています。

現代の恋愛用語意味
半径3メートルの法則自分の周囲3メートル以内の異性しか目に入らない心理状態
ツンデレ普段はツンツンしているが、実は相手に好意を持っている状態
量産型彼氏/彼女個性がなく、多くの人と同じような見た目や趣味を持つ恋人
浮気性ロックSNSなどでパートナーの交友関係を監視・制限すること
デジタル別れSNSでのつながりを断つことでの別れ

これらの言葉からは、対面での交流よりもSNSを中心としたコミュニケーションが重視される現代の特徴が見て取れます。また、「アッシー」「メッシー」のような機能的な役割よりも、相手の性格や関係性のあり方に焦点が当たっていることも特徴的です。

バブル文化が現代に与えた影響

バブル文化は完全に消え去ったわけではなく、形を変えて現代にも影響を与えています。

消費文化への影響

  • プチ贅沢文化:全体的な消費は控えめになりつつも、特定の分野では贅沢をする「メリハリ消費」が定着
  • ブランド志向:高級ブランド品への憧れは継続しており、中古市場の拡大などで入手ハードルが下がっている
  • 体験消費の重視:モノの所有よりも、旅行やグルメなどの「体験」を重視する傾向

言葉の残り方

  • パロディや皮肉としての使用:「今日はあなたがアッシーね」など、役割交代や皮肉として使われることも
  • レトロブームの一部:80年代・90年代ノスタルジアの一環として、これらの言葉が再評価されることも
  • 歴史的教訓として:過度な消費社会の象徴として語り継がれる

バブル期の「アッシー」「メッシー」文化は、一見すると過去の遺物ですが、その本質にある「人間関係の機能化」「経済力と魅力の結びつき」といった側面は、形を変えて現代社会にも影響を与え続けています。私たちは過去の文化を単に懐かしむだけでなく、その意味を理解し、現代の文脈で再評価することで、より健全な人間関係や社会のあり方を模索することができるでしょう。

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