死語を会話に取り入れてみた結果
死語とは?現代では通じない昭和・平成のトレンドワード
「マジ卍」「それな」といった若者言葉も、いつかは「死語」になる日が来るかもしれません。言葉は生き物のように誕生し、流行し、そして忘れ去られていきます。一時代を彩ったトレンドワードが、気づけば誰も使わなくなっている——そんな言葉の移り変わりは、時代の流れを如実に反映しています。
死語の定義とその文化的背景
死語とは、かつて広く使われていたものの、時代の変化とともに使われなくなった言葉や表現を指します。特に若者文化から生まれたスラングや流行語に多く見られ、その時代を生きた人々の共通言語として機能していました。

例えば「チョベリバ」「チョベリグ」といった言葉は、1990年代にギャルブームの中で爆発的に流行しましたが、現在10代の若者に使っても、きょとんとした表情が返ってくるだけでしょう。これらの言葉は、当時の文化や価値観、メディアの影響を色濃く反映しており、言語人類学的にも興味深い研究対象となっています。
死語が生まれる背景には、テレビやラジオといったマスメディアの影響、アイドルや芸能人の一発ギャグの流行、そして若者同士の帰属意識を高めるための独自言語の発達といった要素があります。死語は単なる過去の遺物ではなく、その時代を知るための貴重な文化的アーカイブとも言えるのです。
年代別に見る主な死語リスト
昭和時代の死語
昭和時代には、テレビの普及とともに多くの流行語が生まれました。特に昭和後期(1970年代~1980年代)は、バラエティ番組全盛期であり、お笑い芸人の決め台詞が国民的な流行語になることも珍しくありませんでした。
死語 | 意味 | 流行時期 |
---|---|---|
なめんなよ~ | 「なめるな」の変形。軽く見ないでという意味 | 1970年代後半 |
シブい | かっこいい、魅力的という意味 | 1970年代 |
アッシー君 | 女性の送迎をする男性を指す俗語 | 1980年代後半 |
オタッキー | オタクの古い言い方 | 1980年代後半 |
超ビミョー | 微妙を強調した表現 | 1980年代 |
平成初期の死語
平成初期(1990年代~2000年代前半)は、バブル崩壊後の「失われた10年」と呼ばれる時期と重なりますが、若者文化は依然として活気があり、特にギャル文化から多くの流行語が生まれました。
- マジヤバくない? – 「本当にすごい」を意味する表現
- チョベリバ – 「超Very Bad」の略で、「すごく良い」という逆説的な意味
- めっちゃムカつく – 「非常に腹が立つ」という意味
- ちょー – 「とても」を意味する強調語
- ダサイタマ – 「ダサい」と「埼玉」を掛け合わせた言葉
平成後期の死語
平成後期(2000年代後半~2010年代)になると、インターネットやSNSの普及により、流行語の伝播速度が飛躍的に上がり、同時に寿命も短くなる傾向が見られました。
- KY(空気読めない) – 場の雰囲気を理解できない人を指す
- リア充 – 「リアルが充実している」の略で、恋愛や友人関係が順調な人を指す
- なう – 「今~している」という意味のTwitter由来の表現
- ワンチャン – 「一つのチャンス」の略で、可能性が低いが期待するという意味
- ぱない – 「~がすごい」という意味の形容詞的表現
なぜ言葉は「死語」になるのか?言語学的視点から
言葉が死語になるプロセスには、いくつかのパターンがあります。言語学者の研究によれば、主に以下のような要因が関係しています:
- メディアの変化 – 言葉の発信源となったメディアやコンテンツが衰退する
- 新表現の登場 – 同じ意味をより新しい表現が取って代わる
- 社会環境の変化 – 言葉が指し示していた社会現象自体が消滅する
- 過剰使用による飽き – あまりに多用されて新鮮味がなくなる
- 世代交代 – 新しい世代が独自の言語文化を作り出す

興味深いのは、一度死語になった言葉がレトロブームやアイロニカルな使用によって復活することも少なくないという点です。例えば「イケてる」といった80年代の表現が、2010年代に入ってカジュアルなコミュニケーションの中で再び使われるようになりました。
言葉の寿命は、その時代の社会的背景や文化的文脈と深く結びついています。死語を知ることは、その時代を生きた人々の感性や価値観を垣間見ることでもあるのです。次の章では、そんな死語を実際に現代の会話に取り入れるとどうなるのか、興味深い実験結果をご紹介します。
実験!死語を日常会話に取り入れてみた反応と結果
「ちょーマジやばくない?」「超ビミョー」「イケてる」——こんな言葉を現代の日常会話で使うと、周囲はどんな反応を示すのでしょうか?私は約2週間にわたり、死語を意図的に日常会話に取り入れるという社会実験を敢行しました。その結果は、予想以上に興味深いものでした。
実験方法と対象となった死語の選定基準
この実験では、年代別の死語を意図的に使い分け、相手の反応を観察しました。選定基準は以下の通りです:
- 認知度の高さ – かつて広く使われていたもの
- 世代特異性 – 特定の世代に強く結びついているもの
- 現代との乖離度 – 現在ではほとんど使われなくなったもの
- 語感のインパクト – 聞いて印象に残るもの
選んだ死語の一部を紹介します:
- 昭和世代向け:「シブい」「わかっちゃいるけどやめられねぇ」「そこのけそこのけお馬が通る」
- 平成初期向け:「チョベリバ」「めっちゃむかつく」「超マジ卍」
- 平成後期向け:「リア充爆発しろ」「なう」「それな」
各死語を1日に最低3回は異なる相手との会話で使用し、反応を5段階評価(1:困惑・不快~5:喜び・共感)で記録しました。また、会話の流れや文脈も詳細にメモしていきました。
職場編:同僚や上司の反応
年代別の反応の違い
職場での実験は、最も明確な世代間ギャップが表れる場となりました。40代以上の同僚や上司に昭和時代の死語を使うと、多くの場合「懐かしい!」という反応が返ってきました。特に「シブい」「イケてる」などの言葉は、彼らの青春時代を思い出させるきっかけとなり、会話が盛り上がることが多かったです。
一方、20代の若手社員に同じ言葉を使うと、ほとんどの場合「???」という反応か、「なんか古い言葉使ってますね」と言われることが多かったです。しかし興味深いことに、「イケてる」については若い世代でも理解度が高く、むしろ「レトロでおしゃれ」という評価を得ることもありました。
死語 | 40代以上の反応 | 20~30代の反応 | 10代の反応 |
---|---|---|---|
シブい | 懐かしさ・共感(4.5点) | 理解できるが違和感(3点) | 理解不能(1.5点) |
チョベリバ | 懐かしさ・笑い(4点) | 一部理解・笑い(3.5点) | 理解不能(1点) |
なう | 違和感(2.5点) | 懐かしさ(4点) | 古さを感じる(2.5点) |
思わぬコミュニケーションが生まれたケース

死語を使うことで、思わぬ会話の展開が生まれることもありました。例えば、50代の部長に「この企画書、シブいですね!」と言ったところ、部長が若い頃の話を始め、普段は聞けない貴重な経験談を共有してくれました。
また、顧客との電話対応で緊張感が高まった場面で「超ビミョーな状況ですが…」と言ったところ、相手が笑い、場の雰囲気が和らいだケースもありました。適切なタイミングで使われた死語は、会話の潤滑油として機能することがあるのです。
一方で、公式な会議の場で「この四半期はリア充爆発しろな数字です」と言ったときは、場の空気が凍りつき、あとで上司から注意を受けるという失敗もありました。使う場面と相手を選ぶことの重要性を痛感しました。
プライベート編:友人や家族との会話での反応
世代間ギャップが顕著に表れた瞬間
家族との食事の際、10代の甥に「このラーメン、チョベリバだね」と言ったところ、完全に無視されるという悲しい結果に。一方で「なう」「それな」といった比較的新しい死語は、若い世代には「古い」と認識されながらも理解され、「おじさんことば」として笑いの対象になりました。
友人グループでの飲み会では、同世代(30代)に「マジ卍」を連発したところ、最初は引かれましたが、徐々に全員が使い始め、皮肉混じりの言葉遊びの場が生まれました。懐かしさと照れくささが混ざった独特の空間が形成されたのです。
死語がもたらした思わぬ会話の広がり
プライベートでの死語使用で最も興味深かったのは、世代を超えた会話のきっかけになることが多かった点です。例えば、親と一緒にいるときに「イケてる」「チョベリバ」といった言葉を使うと、必ずと言っていいほど当時の流行や文化の話に発展しました。
「お母さんの若い頃は何て言ってたの?」という問いかけから、普段は聞けない親世代の青春時代の話を聞くことができました。彼らも「ぶっちぎり」「マンモス」などの当時の流行語を思い出し、使い始めるというおもしろい現象も観察されました。
友人の子どもたちとの会話では、彼らが「ほんま卍」「あげみざわ」など、現在の若者言葉を教えてくれる場面もあり、言葉を通じた世代間交流が自然と生まれました。

この実験を通じて、死語には単なる古い言葉以上の価値があることが分かりました。適切に使えば、世代をつなぐ架け橋になり、コミュニケーションに新たな次元をもたらす可能性を秘めているのです。次の章では、そんな死語を現代社会でどのように活用できるのか、実践的なアドバイスをご紹介します。
死語の現代的価値と上手な使い方
「死語」という名前からは、すでに役割を終えた言葉というイメージを持つかもしれません。しかし、実は現代社会においても、死語には独自の価値と魅力があります。本章では、死語が持つ現代的な価値と、それを効果的に活用するための具体的な方法を探っていきましょう。
なぜ今、死語がSNSで復活しているのか
近年、TikTokやInstagramなどのSNSを中心に、死語を意図的に使うトレンドが若者の間で広がっています。2022年に10代~20代を対象に行った調査によると、約65%の若者が「死語をあえて使うことがある」と回答しています。なぜこのような現象が起きているのでしょうか?
主な理由としては以下のようなものが考えられます:
- レトロブームの一環 – ファッションや音楽と同様、言葉もサイクルで復活する
- アイロニーとしての使用 – 古さを自覚した上での皮肉めいた使用
- 差別化要素としての活用 – 個性を表現する手段として
- 親世代との共通言語 – 家族内コミュニケーションでの活用
- コンテンツ化の容易さ – 「死語を使ってみた」というコンテンツの拡散力
特にZ世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)の若者たちは、自分たちが生まれる前の言葉を「レトロでクール」と捉える傾向があります。例えば「チョベリバ」「マジ卍」などの言葉は、その独特の響きからミームのような扱いを受け、「分かる人には分かる」というコミュニティ形成の役割も果たしています。
また、親世代が使っていた言葉を知ることで、家族との会話のきっかけになるという側面もあります。SNS上では「親が若い頃使っていた言葉を使ったらこんな反応だった」という投稿が人気を集めることがあり、死語が世代間コミュニケーションのツールとして機能していることを示しています。
コミュニケーションツールとしての死語の活用法
場の雰囲気を和ませる死語の選び方
死語を会話に取り入れる最大のメリットの一つは、場の雰囲気を和らげる効果です。特に緊張感のある状況や、初対面の相手との会話で適切に使うことで、親しみやすさを演出できます。
効果的な死語の選び方には、以下のポイントがあります:
- 相手の年代を考慮する – 40代以上なら昭和後期の言葉、30代なら平成初期の言葉など
- 過度に古すぎない言葉を選ぶ – 完全に通じないものより、うっすらと記憶に残っているレベルが理想的
- できるだけポジティブな意味合いの言葉を選ぶ – 「イケてる」「チョベリバ」など
- 自虐的に使う – 「私、超KYですみません」のように自分に向けて使うと受け入れられやすい
- 言葉遊び感覚で使う – 深刻な話題に使うのではなく、軽い会話の中で使うのがおすすめ

実際に使うときは、少し照れくさそうに、または「こんな言葉知ってる?」と前振りをしてから使うと、相手も受け入れやすくなります。
避けるべき状況と相手
一方で、死語の使用が適さない状況や相手もあります。以下のような場面では避けたほうが無難でしょう:
- ビジネスの公式な場面 – プレゼンテーションや重要な商談など
- 初対面の目上の人との会話 – まずは信頼関係を築くことが先決
- 深刻な話題を扱うとき – 相手の悩みや心配事を聞いているときなど
- 国際的な場面 – 外国人との会話では文化的な文脈が共有されていない
- 専門的な議論の場 – アカデミックな議論や専門的な会議など
特に注意すべきなのは、相手の感情や状況をしっかり見極めることです。楽しい雰囲気の中では受け入れられる死語も、緊張感のある場面では不適切に映ることがあります。
死語で表現力をアップさせるテクニック
現代語と組み合わせた新しい表現方法
死語の面白さは、現代の言葉と組み合わせることで新たな表現が生まれる点にもあります。例えば:
- 「マジ卍なプレゼン資料」 – 素晴らしいプレゼン資料
- 「チョベリバなインスタ映え」 – とても映えるインスタグラム投稿
- 「リア充なZoom背景」 – おしゃれなビデオ会議の背景
このように、死語×現代用語の組み合わせは、独自の表現を生み出し、会話に個性と遊び心をプラスします。友人グループでこうした言葉遊びを共有することで、独自の「仲間言葉」が生まれ、グループの結束を強める効果も期待できます。
特に文章を書く仕事をしている人にとっては、死語を現代的にアレンジすることで、読者の印象に残りやすい独自表現を開発できるかもしれません。
世代を超えた共感を生み出す言葉の選び方

異なる世代の人々と会話をする際、適切な死語の使用は世代間のギャップを埋める橋渡しになることがあります。ポイントは以下の通りです:
- 誰もが知っている国民的ヒットだった言葉を選ぶ – 「ナウい」「イケてる」など
- 説明しやすい単純な構造の言葉を選ぶ – 「チョベリバ」より「めっちゃ」のほうが説明しやすい
- 使う文脈を明確にする – 「この料理、昔で言う『チョベリバ』だね!」のように補足する
- 相手の反応を見ながら調整する – 理解されていなければすぐに現代語に言い換える
- 会話のきっかけとして活用する – 「これって昔は〇〇って言ったんだよ」と話題提供する
死語を通じて、それぞれの世代が経験してきた時代背景や文化について語り合うことができれば、世代を超えた相互理解と共感が生まれます。特に家族間や職場での異なる世代とのコミュニケーションでは、こうした言葉の交換がお互いの歴史や価値観を知る貴重な機会になるでしょう。
死語は単なる古い言葉ではなく、時代を映す鏡であり、人々をつなぐ架け橋でもあります。適切に活用することで、コミュニケーションに新たな深みと楽しさをもたらしてくれるはずです。言葉の持つ力と魅力を再発見する旅に、あなたも「チョベリバ」に出かけてみませんか?
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