平成初期の流行語が令和では死語に?

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平成初期の流行語が令和では死語に?

時代は移り変わり、言葉も進化します。平成から令和へと元号が変わった今、かつて街中で聞こえていた言葉の多くが若者の間では「???」という反応を引き起こしています。「チョベリバ」と言っても首をかしげる10代、「アッシー」と呼んでも混乱する20代。時代の流れとともに言葉も変わっていくのは自然なことですが、その変化の速さに驚かされることも少なくありません。

今回は、バブル期に輝いていた平成初期の流行語から、令和の今では死語となってしまったものまで、時代の変遷とともに言葉の歴史を振り返っていきましょう。懐かしさを感じる方も、初めて聞く言葉に驚く方も、言葉が映し出す時代の姿を一緒に見ていきましょう。

目次

「バブル期の輝き」~平成初期の流行語とその社会背景~

平成元年(1989年)、日本はバブル経済の絶頂期にありました。株価は史上最高値を記録し、地価は天井知らずの上昇を続け、「土地さえ買えば負けない」と言われた時代です。そんな時代背景が、当時の流行語にも色濃く反映されていました。

平成初期のトレンド言葉とその爆発的人気

平成初期には、テレビの人気番組から生まれた言葉が次々と流行しました。特にお笑い番組からの流行語が多く、視聴率30%を超える番組も珍しくなかった時代だからこそ、一つの言葉が爆発的に広まったのです。

バブル経済が生んだ言葉たち

「イケイケ」「ウハウハ」 – バブル経済の好景気を表す言葉として、「今日もイケイケだぜ!」「ボーナスでウハウハだよ」といった使われ方をしていました。経済の勢いそのものを表現した言葉です。

「ジュリアナ」 – 平成3年に六本木にオープンしたディスコ「ジュリアナ東京」から派生した言葉で、「ジュリアナ系」という女性のファッションスタイルを指す言葉に発展しました。派手なメイクと露出の多い服装が特徴で、当時の豊かさと開放感を象徴しています。

「アッシー君」「メッシー君」 – 女性を車でアシストする男性を「アッシー君」、食事をおごる男性を「メッシー君」と呼びました。これらは「パシリ」として使われる男性を揶揄した言葉で、バブル期の男女関係を象徴する言葉として広まりました。

バブル期の代表的流行語意味使用例
アッシー君女性を車で送迎する男性「今日のデートのアッシー君、ベンツ持ってるよ」
メッシー君女性に食事をおごる男性「新宿のメッシー君が見つかるまでは帰れないよ」
ジュリアナ系派手なメイク・服装の女性「彼女、週末はジュリアナ系に変身するんだよ」
イケイケ勢いがあること「うちの会社、今年もイケイケだぜ!」

テレビ文化全盛期が広めた流行語

「チョベリバ」 – 「超very bad」を略した言葉で、TBSの人気番組「チョベリバ!」から広まりました。「最高!」という意味で使われ、若者を中心に爆発的な人気を博しました。

「わかりません」 – お笑いコンビ「ダチョウ倶楽部」の上島竜兵さんのギャグが発端。何か困ったことがあると、首を横に振りながら「わかりません」と言うシーンが大ヒットしました。

「なんくるないさー」 – 「なんとかなるさ」という意味の沖縄の方言ですが、ドラマ「北の国から」で使われてから全国的に広まりました。バブル期の楽観的な空気感を表す言葉として親しまれました。

バブル期の流行語の特徴は、経済的な豊かさへの自信将来への楽観的な見方が反映されている点です。現在のように将来への不安や節約志向ではなく、消費や享楽を肯定的に捉える言葉が多かったことが特徴的です。

流行語大賞から見る時代の雰囲気

流行語大賞は、その年の世相を反映した言葉を選出する賞として1984年から始まりました。平成初期の受賞語を見ると、当時の日本社会の雰囲気がよく伝わってきます。

平成元年~5年の流行語大賞受賞語とその意味

  • 平成元年(1989年): 「セクハラ」「オバタリアン」 セクシャル・ハラスメントを略した「セクハラ」が社会問題として認識され始めた年でした。また「オバタリアン」(おばさん+バタリアン[怪獣])は、中年女性への揶揄を含む言葉でした。今では差別的であるとして使用されなくなった言葉の一つです。
  • 平成2年(1990年): 「オヤジギャル」「こだわり」 若い女性なのに「オヤジ」のような言動や趣味を持つ女性を指す「オヤジギャル」や、細部にまでこだわる姿勢を指す「こだわり」が選ばれました。
  • 平成3年(1991年): 「借金大国」「おどろきももの木20世紀」 バブル崩壊の兆しを感じさせる「借金大国」や、テレビ番組から生まれた「おどろきももの木20世紀」が選出されました。
  • 平成4年(1992年): 「親父ギャル」「きんさん・ぎんさん」 平成2年の「オヤジギャル」と似た「親父ギャル」や、100歳を超える双子のお年寄り「きんさん・ぎんさん」が有名になりました。
  • 平成5年(1993年): 「Jリーグ」「ハイパーインフレ」 プロサッカーリーグの「Jリーグ」開幕と、バブル崩壊後の経済不安を表す「ハイパーインフレ」が選ばれました。

平成初期の流行語からは、バブル経済の絶頂からその崩壊への移行期であったことが読み取れます。華やかさと経済的な不安が入り混じった複雑な時代だったと言えるでしょう。

流行語はその時代を映す鏡です。平成初期の流行語を振り返ることで、当時の社会情勢や価値観を理解することができます。次の章では、これらの言葉が現代ではどのように受け止められているのか、若者の反応とともに見ていきましょう。

「死語となった平成言葉」~若者が知らない昭和・平成初期の言葉~

令和時代に入り、スマートフォンとSNSが当たり前の世界で育った10代・20代の若者たちにとって、平成初期の流行語は「古い言葉」「死語」となってしまいました。現代の若者が平成初期の流行語を聞いたとき、どのような反応を示すのでしょうか。

現代の若者が理解できない平成初期の流行語

2022年に行われた調査によれば、10代・20代の若者の約70%が「チョベリバ」の意味を知らず、85%以上が「アッシー君」「メッシー君」という言葉を聞いたことがないと回答しています。これらの言葉が生まれた時代背景や文化的文脈を共有していないため、言葉そのものが理解できないのです。

SNS世代が驚く言い回しと表現

「マジカヨ!」「マジックテープ!」 – 驚きを表す「マジか!」をさらに強調した表現で、平成初期に若者の間で流行しました。現代の若者は単に「え、まじ?」「マ?」と簡略化された表現を好む傾向があり、この言葉を聞くと「古い」と感じるようです。

「ちびまる子ちゃん言葉」 – 「キョエー!」「ワクワクドキドキ」など、人気アニメ「ちびまる子ちゃん」由来の表現は、当時の小学生や中学生の間で流行しました。現代では使う若者はほとんどいません。

「ムカつく」 – イライラした感情を表す言葉として平成初期に流行しましたが、現代の若者は「イラつく」「ウザい」など別の表現を好みます。「ムカつく」と言うと年齢がバレると言われています。

「チョー〇〇」 – 「超」を「チョー」と発音し、「チョーかわいい」「チョーうれしい」など強調表現として使われました。現代では「超〇〇」「鬼〇〇」などの表現に取って代わられています。

若者がこれらの言葉を理解できない原因は、メディア環境の変化にあります。平成初期はテレビが情報の主流で、視聴率30%を超える番組から流行語が生まれていました。しかし現代はSNSが中心となり、多様な情報源から言葉が生まれるため、言葉の広がり方や定着の仕方が変わったのです。

職場で使うと年齢がバレる言葉リスト

ビジネスシーンでも、使う言葉で年代が分かることがあります。以下は「使うと年齢がバレる言葉」として、若手社員の間で認識されている言葉のリストです。

  • 「ワープロ」 – 現代では「ワープロ」という言葉自体が死語化しており、「文書作成ソフト」や単に「Word」と呼ばれることが一般的です。
  • 「デスクトップ」 – パソコンの画面上の作業領域を指す言葉ですが、若い世代はスマートフォンやタブレットが主流のため、あまり使いません。
  • 「コピーを取る」 – 現代では「印刷する」「プリントアウトする」と表現することが多いです。
  • 「FAXする」 – メールやチャットが主流の現代では、FAXを使った経験がない若者も増えています。
  • 「シャーペン」 – 「シャープペンシル」の略ですが、若い世代は「シャーペン」よりも「シャープ」と呼ぶことが多いです。

こうした言葉を使うと、「あの人は平成生まれの上の方だな」「昭和世代だな」と思われることがあります。特に仕事の場面では、世代間のコミュニケーションギャップを生む原因にもなっています。

平成言葉と令和言葉の比較

平成初期の流行語と令和の流行語を比較すると、時代を反映した興味深い違いが見えてきます。

平成初期の言葉令和の言葉意味の変化
チョベリバヤバい、神「最高」を表す表現の変化
キレるブチギレ、発狂怒りの表現の強調化
めっちゃ鬼、超、エグい程度の強調表現の多様化
オタクヲタク、沼るマイナスイメージからの脱却
バイトする副業、複業働き方概念の変化

コミュニケーション方法の変化と言葉への影響

平成初期と令和では、コミュニケーション手段が大きく変わりました。その変化が言葉にも影響を与えています。

文字数制限の影響 – TwitterなどのSNSでは文字数制限があるため、言葉が短縮化される傾向があります。「わかりました」→「了解」→「りょ」といった変化は、SNS時代の産物です。

絵文字・スタンプの普及 – LINEなどのメッセージアプリでは、言葉の代わりに絵文字やスタンプでコミュニケーションを取ることも一般的になりました。「おはよう」の代わりに太陽の絵文字だけを送るなど、言葉そのものが省略されることも増えています。

英語由来の言葉の増加 – グローバル化やインターネットの普及により、「エモい」(emotional)、「バズる」(buzz)など、英語由来の言葉が増えています。平成初期に比べ、言葉の輸入速度が格段に速くなっていると言えるでしょう。

言葉のライフサイクルの短縮化 – 平成初期の流行語は数年間使われることもありましたが、現代の流行語は数週間から数ヶ月で廃れていくものも少なくありません。情報の流通速度が速くなった結果、言葉の寿命も短くなっているのです。

令和時代の言葉の特徴は、簡潔さ即時性にあると言えるでしょう。SNSでの拡散を前提とした言葉が多く、インパクトを重視した表現が増えています。また、共感を得るための言葉も増えており、「わかる」「それな」など、相手の意見に同意する表現が多様化しています。

平成初期の言葉がバブル経済の豊かさを反映していたのに対し、令和の言葉には効率性実用性を重視する傾向が見られます。「時短」「プチプラ」「コスパ」など、限られた資源をいかに効果的に使うかを表す言葉が増えているのも特徴的です。

このように、平成から令和への移行の中で、言葉は大きく変化してきました。次の章では、一度死語となった平成言葉が現代で復活する可能性や、言葉の持つ文化的価値について考えていきましょう。

「平成言葉の現代的解釈」~古い言葉が持つ新しい可能性~

一度死語となった言葉が再び注目を集めることがあります。「死語」と思われていた平成初期の流行語が、新たな文脈で復活する可能性や、言葉が持つ文化的価値について考えてみましょう。

リバイバル現象と言葉のサイクル

ファッションや音楽には約20年周期でリバイバルする傾向があることが知られていますが、言葉にも同様の現象が見られます。実際、近年では90年代ファッションのリバイバルに伴い、平成初期の言葉にも再注目の兆しが見えています。

再評価される平成初期の言葉たち

「チョベリバ」のアイロニカルな使用 – Z世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)のインフルエンサーの間で、あえて古い言葉を「ネタ」として使うケースが増えています。TikTokなどのショート動画プラットフォームでは、「チョベリバ」や「ナウなヤング」などの言葉をパロディとして使う投稿が人気を集めることも。

「バブリー」の復活 – バブル期を象徴する言葉として使われていた「バブリー」という言葉が、2017年の「バブリーダンス」ブームをきっかけに再評価されました。「派手で豪華」という意味合いはそのままに、現代風にアレンジされて使われています。

企業マーケティングでの活用 – 懐かしさを訴求するレトロマーケティングの一環として、平成初期の流行語を意図的に使用する企業も増えています。30代〜40代の消費者のノスタルジーを刺激し、購買意欲を高める効果があると言われています。

ここで注目すべきは、これらの言葉が元の意味とは異なる文脈で使われていることです。単純な復活ではなく、一種のパロディやオマージュとして、アイロニカルに使われるケースが多いのです。

言葉のサイクルと文化的文脈

言葉のリバイバル現象には一定のパターンがあります。

  1. 流行期 – メディアを通じて爆発的に広まる時期
  2. 定着期 – 広く一般に使われる時期
  3. 衰退期 – 新しい言葉に取って代わられ、使われなくなる時期
  4. 死語期 – 完全に使われなくなり、死語と認識される時期
  5. ノスタルジー期 – 懐かしさから再評価される時期
  6. パロディ期 – 元の意味とは違う文脈でアイロニカルに使われる時期
  7. 再定着期/再解釈期 – 新しい意味や用法で再び定着する時期

平成初期の多くの流行語は現在、4〜6の段階にあると考えられます。これらの言葉が新たな意味を獲得し、再定着するかどうかは、これからの言語使用の中で決まっていくでしょう。

レトロブームと言葉の復活事例

実際に死語から復活した言葉の事例を見てみましょう。

「イケてる」の復活 – 80年代後半から90年代に流行した「イケてる」(格好いい、優れている)という言葉は一度死語となりましたが、2010年代後半から「イケてる」「イケイケ」という形でインターネットミーム化し、特にZ世代の間で皮肉を込めて使われるようになりました。

「ダサい」の進化 – 「ダサい」(格好悪い)は平成初期から使われていましたが、一時期は古い表現と見なされていました。しかし近年、「ダサかわいい」「ダサカッコいい」など、複合的な美意識を表す言葉として進化し、むしろポジティブな意味合いで使われることも増えています。

「まじ卍(まじマンジ)」の誕生 – これは新しい言葉ですが、古い仏教シンボル「卍」を現代的に再解釈した例として興味深いものです。「まじマンジ」は「すごい」「最高」という意味で使われ、文字の見た目のインパクトから若者の間で流行しました。

こうした事例からわかるのは、言葉の復活には何らかの現代的な解釈や意味の付加が必要だということです。単に昔の言葉をそのまま使うのではなく、現代のコンテキストに合わせたアレンジが行われることで、言葉は新たな命を吹き込まれるのです。

言葉の継承と文化的アイデンティティ

言葉は単なるコミュニケーションツールではなく、文化的アイデンティティを形成する重要な要素です。平成初期の言葉が持つ文化的価値について考えてみましょう。

言葉が運ぶ時代の記憶

平成初期の流行語には、バブル経済の繁栄と崩壊、テレビ文化の全盛期、携帯電話の普及前のコミュニケーションスタイルなど、特定の時代の雰囲気が封じ込められています。これらの言葉を知ることは、その時代の社会や文化を理解することにもつながります。

国立国語研究所の調査によれば、流行語はその時代の社会問題や価値観を反映する「言語的タイムカプセル」の役割を持っています。例えば「セクハラ」という言葉が流行語になった背景には、職場での性差別への問題意識の高まりがありました。

世代を超えた言葉の伝え方と価値

では、平成初期の言葉を新しい世代に伝えることにどのような価値があるのでしょうか?

世代間コミュニケーションの促進

異なる世代が互いの使う言葉を理解することは、世代間のコミュニケーションを円滑にします。職場や家庭で、平成初期の言葉と現代の言葉の違いについて話し合うことは、互いの価値観や考え方を理解する良いきっかけになるでしょう。

言語感覚の多様化

若い世代が過去の言葉に触れることで、言語感覚が豊かになる効果も期待できます。「チョベリバ」と「ヤバい」では、同じ「最高」を表すにもニュアンスが異なります。様々な時代の表現を知ることで、より繊細なコミュニケーションが可能になるのです。

言葉の継承方法

平成初期の言葉を後世に伝えるためには、いくつかの効果的な方法があります。

  • メディアミックス戦略 – 平成初期を舞台にした映画やドラマ、アニメなどで当時の言葉を自然に使うことで、若い世代に伝わる可能性があります。実際、「今日から俺は!!」などの90年代を舞台にした作品がヒットし、当時の言葉に触れる機会を提供しています。
  • 教育の場での活用 – 国語教育の中で流行語の変遷を取り上げることで、言葉と社会の関係について学ぶ機会になります。一部の大学では「流行語から見る日本社会」といった授業も開講されています。
  • デジタルアーカイブ化 – 流行語大賞の記録や当時のテレビ番組をデジタルアーカイブとして保存・公開することで、研究や教育に活用できるようになります。

言葉は生き物のように変化し続けるものです。平成初期の言葉の多くは確かに「死語」となりましたが、それは言葉の自然な生態系の一部と捉えることもできます。大切なのは、言葉の変化を単なる「古い・新しい」の二項対立で捉えるのではなく、言語文化の連続性の中で理解することではないでしょうか。

平成初期の言葉が持つ文化的価値を認識し、次の世代に伝えていくことは、日本語という言語の豊かさを守ることにもつながるのです。言葉は時代とともに変わりゆくものですが、過去の言葉が持つ魅力や面白さは、時を超えて私たちに語りかけてくるのです。

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